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2018.02.20 生物が正常な状態を維持できる秘密を探る

研究紹介

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2018.02.20

生物が正常な状態を維持できる秘密を探る

工学部生命化学科 片山秀和准教授

 

あらゆる生物が生きていくうえで欠かせない働きをするホルモン(糖ペプチド)は、人体や人の健康に直接かかわりのある分野での研究は進んでいるが、まだまだ謎が多く未解明の部分が多い。そうした状況は人間以外の動物でも変わらない。一方で、魚類や甲殻類、鳥類などの生態を明らかにし、創薬や食料の養殖技術向上に生かす研究も盛んに行われており、ホルモンの合成や機能分析へのニーズは高まっている。分子生物学と有機化学を組み合わせて甲殻類のホルモンの構造や機能の研究を続ける片山秀和准教授の研究室を訪ねた。

世界で初めてホルモンの構造を解明し合成に成功

高級食材として珍重されるクルマエビは、ふ化の際にはすべての個体がメスで生まれてくる。1センチメートルほどの大きさに成長したころ、オスとなるべきホルモンを持つ個体だけがオスに変わる。片山准教授は、その「オスに変わるためのホルモン」(造雄腺ホルモン)の人工合成に成功。メスのクルマエビの幼体に注射してオスに転換することも証明するという、生命の神秘に触れる実験に世界で初めて成功した。

「有機化学は、タンパク質や脂質、糖といった生体を構成する有機化合物を研究する学問です。もともと生体に備わっているこれら有機化合物の構造を解析し、同じものを人間の手でつくりだす。今はさらに、つくりだした有機化合物を生体に投与した先にある生物学的な分野にまで、社会的な興味やニーズが広がってきています」

有機化学をベースとする現代の生命化学は、化学と生物学を結びつける分野であると同時に両方を理解していなければならない。さらにその両方からも必要とされる専門性の高い分野でもある。実際、片山准教授のもとには多くの研究者からホルモン合成の相談や依頼が寄せられている。その要請に応えるために新たなホルモン合成法を開発したり、片山准教授が独自に作り出したホルモンを他の研究者に使ってもらったりすることによって、新たな知見や可能性の発見につながっている。

タンパク質合成の基本は「20種類のアミノ酸をどう並べるか」であり、その一種であるホルモンも同じ。「合成する際にはまず、こうすればこれができるはずという作業仮説を立てます。実際に合成してもうまくいかない場合もありますが、突き詰めていけば理由はわかります。次は原因部分を修正する。その過程で思いがけない化合物ができた時に、これを何かに応用できないかと考えるのも楽しいですね」。

世界でも珍しい総合的な生命化学研究室

甲殻類のホルモンの研究は、世界的に需要の多い食材の生命現象を解明することで、食糧問題の解決につながる可能性がある。また、ホルモンの合成技術は化学や生物学の枠を超えて、生命の神秘を探求する研究者同士の協力や交流の核にもなっている。ホルモンの解析から合成、そして共同研究による生物への応用実験――、これだけ総合的な研究ができる研究室は国内でも数少ない。「今後も甲殻類のホルモンの機能解明に向けた研究を中心に、ホルモンの合成を通じてさまざまな分野の研究者と連携していきたい」と語る。

学生に伝えたい「今を楽しもう」

研究者として歩んできた自身の経験から感じているのは、「人生は楽しまなければ損。ただし、楽しいと楽は違う」ということ。「自分が楽しめることを成し遂げるためには、苦労はあって当然。私自身も楽な道を選んだつもりはありません。ただし、やりたいことを思う存分楽しんだり、そこで出会う大変なことを乗り越えたりしながら、目指すものに到達したときの喜びを思いっきり味わえるのは学生の特権です。だからこそこの時期を大切にしてほしい」

今を楽しむためにも、その成果を未来につなげるためにも、「自分で考え解決する力をつけてもらいたい」とも考えている。「ゼミに入った直後は、“実験でこういう結果が出ました”とだけ報告にくる学生も、“それで君はどう思うの?”と繰り返して聞くうちに、自分で考え、それを踏まえて考察した結果を報告できるようになります。すぐに方法や答えを他人に求めるのではなく、まず自分で考えるクセをつける。その力は社会人になってからも大きな武器になるはずです」

生命化学科:片山秀和准教授
【Profile】
かたやま・ひでかず
1977年東京都生まれ。東京大学卒業後、同大学院農学生命科学研究科 応用生命化学専攻修了。大阪大学蛋白質研究所特別研究員などを経て現職。博士(農学)。
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