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2022.03.08 摩擦の力で動力をコントロールする
工学部動力機械工学科 山本建先生

研究紹介

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2022.03.08

摩擦の力で動力をコントロールする
工学部動力機械工学科 山本建先生

ガソリンで走るエンジン自動車から、ハイブリッドカーへ。そして電気自動車や水素自動車へ。今、次世代の車が模索されています。どんな形になろうとも、たくさんの部品、高度な技術の組み合わせによって動くことは変わりません。そんな技術のひとつとして、摩擦の力で効率よくモーターを動かす研究を続ける動力機械工学科(4月から機械システム工学科)・山本建先生にお話をうかがいました。

自動車メーカーで技術開発に関わり、ハイブリッドカーのシステムが「実現するわけのないおかしな車」といわれていた時代から、その開発にも携わっていた山本先生。

ガソリンか電気か水素か、エンジンかモーターかなど、さまざまなシステムが実現可能になったことによって、先が読みにくい車の研究開発の分野で、摩擦の力を動力に結びつける研究をしています。

「ゆっくり回って力を出すエンジンに対し、モーターは非常に高速で回転します。一方、エンジン車も電気自動車もタイヤの回転速度は同じなので、モーターの回転速度を落としてやる必要があります。そのため、ハイブリッドカーや電気自動車の時代になってもモーターの回転の速さを抑える減速機が必要になるのです」

自転車のギアチェンジを考えるとわかりやすいでしょう。ギアを軽くするとペダルの回転に対してタイヤの回転は遅くなりますが,その分,力は強くなります。

「そこでモーターに軽いギヤを組み合わせてタイヤに伝わる速度を落として力を増幅し、車をスムーズに走らせるための動力を得るのです。それをいかに効率よくできるか。そこに注目して研究を進めています」

これまでの減速機では、大小の歯車を組み合わせて回転数を抑えてきました。そのため、騒音を抑える対策の研究に力が注がれています。

もし、表面がツルツルのローラーの組み合わせで摩擦を発生させ、それをうまくモーターに伝えることができれば、騒音は発生しません。同時に、減速機の冷却に欠かせないオイルが、歯車の場合、かき混ぜる駆動力をロスします。ツルツルの面の場合、オイルのロスが少なく。そういった新しい発想の減速機が実用化すれば、自動車のシステムはもっと自由になるでしょう。

歯車よりシンプルなローラーで 効率よく大きな車体を動かす

具体的にはモーターに小さなローラーをつけ、タイヤ側に大きなローラーをつけます。モーターを回すとタイヤのローラーが回り、車体を進ませます。

「ローラー同士や、モーターとローラー、ローラーとタイヤをどうやって押し付けるか。いかに動力に連動させるかが大きな課題です。摩擦がしっかり生まれるか。もっと摩擦を高められないか。常にそれを考えています」

押し付けるといっても、単に強く押し付ければ効率が悪くなります。必要な分だけ減速する。アクセルを踏んだ分だけ、押し付けの力が加わるためにはどうしたらいいのか。

ふとアイデアが浮かぶと、足で地面に書くなど、とにかくその場にあるものに記録しようとする。そんな「研究者あるある」の経験もあるという山本先生。

「材料などの研究とは違い、形の固定した硬いものを扱うので、計算で考えていける面白さがあります。考えて計算して、実験でそれを実証する。この世にない新しいものを、頭の中で組み立て、実現することができる。それが機械を研究する面白さだと思います」

摩擦を使った減速機や、摩擦でモノの動きをコントロールする技術は、もちろん車以外にも活用できます。将来、モーターを使う飛行機が空を飛ぶかもしれません。そんなモーターの開発には減速機もセットでついてきます。

「アイデアを思いつくまでは辛いこともありますが、それを乗り越えて道が見えたとき。自分の考えが実験で実証されたときは最高です」

 

【Profile】動力機械工学科・山本建 准教授
やまもと・たけし 1969年大阪府生まれ。東京理科大学基礎工学部卒業後、日産自動車に勤務。2016年より現職。工学博士。専門は、ものづくり技術(機械・電気電子・化学工学) 機械要素、トライボロジーなど。
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