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2022.02.03 燃料工場のごみをクリーンに
原子力工学科(4月から応用化学科)・浅沼徳子先生

研究紹介

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2022.02.03

燃料工場のごみをクリーンに
原子力工学科(4月から応用化学科)・浅沼徳子先生

原子力発電に使う燃料の製造から発電所の運用まで、それぞれの過程で放射性廃棄物が発生しています。その廃棄物は放射能レベルを下げなければ処分することはできません。そのため、工場や発電所には多くの廃棄物が保管され続けているのです。今回は、将来、放射性廃棄物処分の一手となりうる「ウラン廃棄物からのウラン分離技術の開発」に取り組んでいる原子力工学科の浅沼徳子准教授に話を伺いました。

 

核燃料の加工施設から出る膨大なウラン廃棄物

放射性廃棄物のひとつにウラン廃棄物があります。ウランを採鉱→製錬→濃縮→成型加工→原子力発電所という核燃料サイクルの流れのなかで、成型加工までの施設から出てきます。

「消耗品、スラッジ(沈殿物)、排気フィルターなどいろいろあります。消耗品というのは作業服や手袋ですが、こちらを洗うと洗濯廃液にもなります。消耗品類の一部は焼却処理すると、焼却灰になります。焼却灰にも高濃度のウランが混じっています。また加工施設では、濃縮ウランを成型加工してペレットをつくります。その時に削りカスが出ますが、それを洗浄すると廃液が出ます。廃液の中に混ざったウランを回収するために、沈殿処理をしていますが、それがスラッジになり、ここにも多くのウランが含まれています」

いずれも放射能濃度が高いためすぐには処分できず、各工場で何十年も保管されている状態です。

ちなみに、核燃料サイクルのなかでウラン廃棄物は2048年頃には鉄殿物が400トン以上、ウラン濃度の高いシリカ殿物が60トン以上、焼却灰が200トン以上発生すると予測。ウランの半減期は長く、濃縮ウランの濃度が自然界に存在する状態になるまで減衰するのは期待できないため、ただ保管しているだけでは問題は解決しません。

炭酸塩水溶液でウランとそれ以外に分離する実験

その解決策として浅沼准教授が取り組んでいるのが、炭酸塩水溶液を使ってウランを分離する技術の開発です。

「炭酸塩水溶液はウランだけを溶解できる可能性が高いのです。研究室では沈澱物を模した模擬スラッジを使って原理確認試験にとりくんでいます」

「ウランとそれ以外に分け、濃度を下げることができれば処分が可能になります。廃棄物中のウランを1グラムあたり100ベクレル以下の濃度に下げられれば、セメント固化し、国際基準に従って地下50mくらいのところ(浅地中)に埋めることもできるようになり処分の負荷を軽減できます。この浅地中処分が研究室の目標です」

東海大だからこそできる研究

「ウランというと怖い物質のように思うかもしれませんが、実は海水中にはウランが安定的に溶けています。ウランは紫外線をあてると緑色の光を放つ特徴があり、ウランガラスとして装飾品や食器などに使われていました。もともとウラン鉱石は自然界にあるものなので、濃度が低ければ人体に及ぼす影響はほとんどないのです」

環境問題に関心が高かった浅沼准教授。学生時代からウランを取り扱える実験室に在籍し、炭酸塩にウランを溶かす実験をしていたと言います。

「まったく危ないものでなく、半世紀ほど前は普通の薬品と同じように使用していたそうです。今は取り扱いに規制がかかるので、ウラン化合物として購入したり、日常的に触れたりすることができません。そのため原子力工学科という学科はあっても、実際に扱えないところもあります。しかし東海大学は、今までの実績から取り扱いの許可を得ており、模擬スラッジを使用しています。こういう実験ができるのは、国内でも少ない大学だと思います」

「私の研究は化学が基礎になっているため、いろいろな分野に応用できる可能性があります。原子力と聞くと日常生活とはかけ離れた分野のように思われるかもしれませんが、実は原理はとても身近なところにあるのです。ウラン廃棄物処理や再処理など研究としてやれることはまだまだある、可能性のある分野だと思います」

 

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