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2022.02.03 魚を使って筋ジストロフィーのメカニズム解明をめざす
生命化学科(4月から生物工学科)・三橋弘明先生

研究紹介

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2022.02.03

魚を使って筋ジストロフィーのメカニズム解明をめざす
生命化学科(4月から生物工学科)・三橋弘明先生

筋肉の機能が低下、壊死し運動機能など各機能に障害をもたらす指定難病の筋ジストロフィー。遺伝子変異が原因で発病することはわかっていますが、いまだに治療法が見つかっていません。生命化学科・三橋弘明准教授の研究室では、50種類ほどある筋ジストロフィーの病型のなかでも主に顔面肩甲上腕型(FSHD)について、その解明に取り組み続けています。

顔面肩甲上腕型の原因となる遺伝子DUX4を2年かけて証明

そもそも顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーとはどういう病気なのでしょう?

「顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーは、特に腕、肩、顔の筋肉が衰えていく病気です。例えば顔の表情がつくれないので、笑おうとしてもニッコリ笑えません。脳神経から指令は出ているのですが、筋肉機能が弱っているので動かないのです」

なぜそこに症状が強く出るかはまだ解明されていませんが、筋ジストロフィーは遺伝子変異が原因でおこるということはわかっています。人間は約2万個の遺伝子を持っていますが、約50種類の筋ジストロフィーの原因となる遺伝子は全て違います。

「遺伝子には名前が付けられていますが、この顔面肩甲上腕型の場合、DUX4遺伝子が悪さをしており、どういう過程で悪さをしているかということも少しずつわかってきました」

三橋先生の研究室では、この実験でゼブラフィッシュを使用。「DUX4をゼブラフィッシュの卵に注入して、筋ジストロフィーの症状(うまく泳げなくなる)が出るかを確認する実験を続け、2年くらいかけてDUX4が原因であることを確認できました」

DUX4には良いものと悪いもの2種類が存在する

「さらに詳しく調べたところ、DUX4にはDUX4-flとDUX4-sの2種類が存在することがわかりました。DUX4-fl は悪さをしますがDUX4-s は悪さをしないことも。さらにこの二つを同時にゼブラフィッシュに注入したところ、DUX4-s がDUX4-fl の働きを食い止めることもわかってきました。そのため、DUX4-s をもっとがんばらせる方法がわかれば進行を抑える効果があるのではと考えています」

「さらに、なぜDUX4-fl が悪さをするか、その理由も同時に探しています。東海大学医学部で遺伝子配列に詳しい中川草先生との共同研究です。たとえば新型コロナは肺炎を起こすことはわかっていても、なぜ肺炎になるかがわからないと治療薬ができませんよね。それと同じで、DUX4が細胞の中で何をしているかを解明できれば、治療法もわかってくると考えています」

実験に欠かせないゼブラフィッシュとは

三橋准教授の研究室には水槽が並び、そこには無数のゼブラフィッシュが泳いでいます。この卵にピコグラム(1グラムの1兆分の1)単位のDUX4を注入してデータを収集します。

「最近、ラットの代わりとして欧米で使われ始めているのがゼブラフィッシュ。一度にたくさん飼育でき、たくさんの実験ができるメリットがあります。卵の段階で特定の遺伝子を注入すると、さまざまな特性を持った個体を作ることができるうえ、稚魚は身体が透明なので生きたままの状態で内臓などを見ることができる特徴もあります」とのこと。研究室では、特定の臓器や組織を発光させる遺伝子操作技術も駆使しながら、研究を続けています。

大学生の頃から、人の健康の役に立ちたいと考えていた三橋准教授。医学研究のなかで、治療法のないものに挑戦、貢献したいと筋ジストロフィーの研究に携わって約20年。「難病なので患者数は少ないが放置されていいわけではない。患者さんたちの『少しでも早く治療法を見つけて欲しい』という期待に応えられるように地道に成果を上げたい」と話してくれました。

 

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