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2021.02.05 誰もが安心して使えるロボットを開発
工学部機械工学科・甲斐義弘教授

研究紹介

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2021.02.05

誰もが安心して使えるロボットを開発
工学部機械工学科・甲斐義弘教授

私たちが日々利用している電車や自動車、携帯電話などを造る工場では、人間とともにロボットが働くようになっている昨今。最近では人工知能(AI)を搭載したお掃除ロボットやレストランで食べ物を運ぶロボットも登場するなど、どんどん身近な存在になっています。そんなロボット技術をより安心・安全に使えるようにしつつ、医療や福祉、農業などにも活用しようと研究している機械工学科・甲斐義弘教授の研究室を訪ねました。

甲斐教授の研究室では、「人の活動をサポートするロボット」の開発を手掛けています。

「日本では年々高齢化が進んでおり、2050年には65歳以下の働き手の数と65歳以上の高齢者の数が同数になるといわれています。そうなると、高齢者が高齢者を支えなければならなくなり、人間だけではさまざまな産業やサービスが維持できない時代がやってくる。ロボットを使ってそのサポートをしたいと考えています」

高齢者も使うことを考えた時にまず大切なのが、だれもが「安心・安全」に使えること。ロボットが暴走して人を傷つけることが間違ってもあってはいけません。そのために、甲斐教授が生み出したのが「機械制御だけで動く安全装置」です。

「ロボットを電気だけで制御した場合、急加速などの異常を感知するセンサが壊れてしまうと異常が起きた時に止まらない危険性があります。そこに機械で制御できる安全機構があれば、電気回路が壊れても機械を止めることができ、より安全に使えるようになります」

その技術をもとに、研究を進めているのが腰や肩、膝などの関節にけがを負った人用の「リハビリアシストスーツ」です。関節をケガした場合には、リハビリのプロである理学療法士がサポートするのですが、療法士の負担が大きいのが課題になっています。そこで、研究グループでは、患者の体に装着して関節の動きをアシストする機械を開発。そこに、急激な速度変化が起きた時にはアシストスーツに組み込まれたモーターが止まる「速度ベース安全装置」を組み込んで安全を確保。そのほかにも利用者の転倒を防ぐ装置を備えた「歩行訓練支援システム」や食事運搬などの日常生活を支援するロボット用の安全装置の開発も手掛けています。

ブドウ農家の収穫にも活躍
電源不要で山間部でも利用可能

さらに農業分野からは、ブドウやリンゴといった果樹の収穫を支援するアシストスーツが高い注目を集めています。果樹を収穫する時には、木になった実を一つひとつ手で収穫するのですが、ずっと腕を上げていなければならず、農家の大きな負担でした。そこで、甲斐教授の研究室では、安全機構の発想を応用して希望した場所で腕を固定できるアシストスーツを開発。これから実際に農家の方に使ってもらうための実証実験も行う予定です。

 

「腕を固定する機構も機械式なので電源が要りません。そのため、果樹園の中で電源がない場所でも活用でき、何よりバッテリー不要のため軽量化できるメリットがあります。果樹園だけでなく、自動車の修理などさまざまな分野で活用できると期待しています」

 

現在は、目の動きだけでドローンを制御する技術の研究も進めている甲斐教授。「さまざまな技術は、多角的に見ることで当初の目的とは違う用途や場所でも転用できるようになります。安全機構の技術と遠隔制御技術を組み合わせて、遠隔でのリハビリを支援するシステムの開発も進めたいですね」

 

研究室の成果を社会に届けたい
大学院工学研究科機械工学専攻2年 佐藤喜昭さん

学部生のころからチャレンジセンター「ライトパワープロジェクト」に所属し、ものづくりに挑んできた佐藤さん。甲斐教授の研究室に飛び込んだのも、「機械だけで安全を守る」ところに魅力を感じたことがきっかけでした。

研究を重ねるうちに、この分野の面白さにどんどん引き込まれていったといいます。「機械の仕組みは私たちの生活のさまざまな部分を支えています。その技術を組み合わせたり、改良することで新しい発見がどんどん生まれてくる。しかも、安全装置へのニーズは高く、学会で研究成果を発表するとたくさんの人から質問が寄せられるのもやりがいにつながっています」

今後、私たちの生活にロボットが身近になればなるほど、電気やセンサに頼らない安全装置がどうしても必要になると語る佐藤さん。「研究室で手掛けている成果が人々の安全を支える最後の砦として活躍する、そんな時代がくると期待しています」と話しています。

機械工学科:甲斐義弘教授
【Profile】
かい・よしひろ
1999年同志社大学大学院工学研究科機械工学専攻博士後期課程修了。高知工科大学を経て、工学部機械工学科に着任。専門はロボット工学

 

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