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2018.11.06 通信用レーザーでガスを測定し、医療や環境の分野に活かす 
電気電子工学科 遊部雅生教授

研究紹介

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2018.11.06

通信用レーザーでガスを測定し、医療や環境の分野に活かす 
電気電子工学科 遊部雅生教授

スマホなどにも利用される通信用レーザーを応用して、さまざまなガスを測定し、病気や住環境の状態の状態を調べる。電気電子工学科の遊部雅生教授は、通信用のレーザーと環境測定という一見関係がなさそうなものをつなぐ技術を研究している。ユニークで大きな可能性を含む研究について聞いた。

シックハウス症候群の原因物質や火山周辺の有毒ガスの安全確認が可能に

 

生活の便利さと、安心・安全で快適な状態は、同時に保たれてこそ意味がある。たとえば建物内の空気の状態を、リアルタイムで即時に測定できる方法があれば、建物の環境を常に安全に保てる。

そんな夢を実現する技術を、遊部教授は研究している。研究のカギを握っているのは通信用の半導体レーザーから広い帯域の中赤外光を生み出せる「光波長変換素子」だ。この素子を活用し、ガスの種類と量を瞬時に、かつ高い精度で測定できるガスセンシング(ガス測定)技術は注目を集めている。

さまざまな物質は、それぞれ吸収する光の波長に違いがある。遊部教授のガス測定技術はその性質を利用。広い帯域の中赤外光をガスにあて、その吸収の仕方を観察してガスの種類や濃度を分析する。

「この技術を活用すれば、シックハウス症候群の原因物質とされるホルムアルデヒドなどの有無や、環境負荷の計測、火山周辺の有毒ガスの安全確認などが簡単にできるようになる。また、測定機に息を吹きかけるだけで、体内の状態もわかるような技術も実現したい」と語る。

現在そうした技術を実現させるため、医学部などと共同で、ヒトの息や皮膚から出るガスと病気の因果関係を調査する研究も進めている。

光通信用レーザーの高度化はあらゆる分野に影響する

遊部教授はもともと、NTT(日本電信電話株式会社)で光通信の研究に携わってきた。スマートフォンなどの携帯電話では、近くの通信アンテナまでは電波で情報を伝え、その先の端末にはレーザーや光ファイバーなどの光通信を用いている。現在のスマホの普及率を見ればわかる通り、多くの人が使う光通信、レーザー用の機器は非常に安価になり、容易に入手できるようになった。「安い部品を組み合わせてもかなりのことができるようになってきた。そうした状況をうまく活用し、新たな技術を生み出したい」と遊部教授は語る。

その一方で、光通信の容量は増え続けており、このままでは限界が来てしまうといわれる。より大容量の通信を速く遠くまで、雑音のないきれいなデジタル信号を送れる技術の開発も急務になっている。

遊部教授は、そうした課題の改善にも取り組んでいる。波長変換素子の技術を用いて光を増幅させる新しい仕組みと装置を開発。「光を増幅して劣化を防げれば、より大容量の通信が可能になる。その技術は同時に、ガスセンシングの精度を高度化することにもつながる」という。

目には見えなくても身近な光、その大きな可能性を探りたい

電気や光、レーザーは目に見えない。「とらえどころがないように感じられるかもしれませんが、実はとても身近なものです。スマホをはじめ、今や私たちの生活は光通信なしでは成り立ちません」と遊部教授。

今注目の技術の中にも、光通信が支えているものがたくさんある。たとえばIoT(もののインターネット化)の先にあるIoC(顧客のインターネット化)は、大容量高品質の通信技術が前提になっている。遠隔操作ロボットや自動で制御の家電なども通信技術が支えている。また自動車の自動運転の実現にも、ネットワークの高度化が欠かせない。自動で安全に運転するためには、自動車がいろいろな情報をネットワークから取り込む必要があるからだ。「現在実現しつつある未来の生活のいたるところに、光や通信、レーザーの高度化と、その活用の工夫が求められている」という。

「自分の研究と他分野の研究を多角的に結びつけられるのが総合大学のメリットです。私たちの研究分野は、あらゆる分野に関わっていくもの。技術研究を深めるとともに、どのように活用できるか、いろいろな可能性を模索できます。こんなワクワクする分野に興味がありませんか? ぜひ飛び込んでほしい」

電気電子工学科:遊部雅生 教授
【Profile】
あそべ・まさき
慶應義塾大学大学院理工学研究科物物質科学専攻修了。博士(工学)。日本電信電話株式会社光ネットワーク研究所、フォトニクス研究所を経て2013年から現職。専門は、光通信、フォトニックネットワーク、非線形光学、センシング

 

 

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