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2018.02.06 世界的に注目を集めるウェブハンドリング技術研究の最前線 機械工学科・砂見雄太講師

研究紹介

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2018.02.06

世界的に注目を集めるウェブハンドリング技術研究の最前線 機械工学科・砂見雄太講師

 

「ウェブハンドリング」。聞き慣れない言葉かもしれないが、すでに身の回りの、特に最新技術を用いた機器には使われており、その可能性を考えると、さらなる研究や技術革新が切望されている分野なのだ。国内のみならず、世界的にもウェブハンドリングの第一人者と認められる研究室が東海大学にある。「橋本・落合・砂見研究室」の砂見講師に話を伺った。

ウェブハンドリング技術とは、薄く柔らかい媒体、たとえばフィルム、紙や箔など(ウェブ)を扱う技術。たとえばロール状に巻かれた紙やフィルムなどを印刷機に搬送し、印刷するのもウェブハンドリングの一種。中でも新聞のように、ロール状の紙やフィルムを送り出して印刷し、それをまた巻取ってロール状にすることを「ロールトゥロール(R2R)」という。

この技術をより幅広い素材に応用する技術の研究が今、世界的に注目を集めている。その理由は、基盤に電子回路を直接印刷する「プリンテッド・エレクトロニクス(PE)」技術の需要の高まりにある。部品を組み立てた基盤ではなく、フィルムなどに直接電子回路を印刷する。これができれば、丸めて持ち運べるテレビや肌に貼り付けて体温や心拍数などを計れる計測器なども製造可能だ。また医療への応用として、超薄膜に医薬品の有効成分を印刷する研究も進められている。

だがその実現にはさまざまな課題がある。一定以上の厚みのある素材に印刷する場合、ごくわずかな歪みや巻き取りのゆるみがないよう印刷工場などでは経験豊富な技術者が経験で補正している。しかし高機能な電子回路や、多くの複雑な情報が集積したデータなどを印刷するとなると、ささいなズレや歪みも許されない。しかもフィルムなどの膜は一定以上の薄さになると、紙などとは全く違う性質を持つため、これまでの経験が生かせないという欠点がある。

そのため研究や実験レベルでは実現しているものの、本格的な実用化に向けての確立はいまだならず。いつ、だれが画期的な技術を確立するのかは世界の研究者、産業界の注目の的であり、「橋本・落合・砂見研究室」はその有力候補だ。当然のことながら、産学連携の機会も多く、研究室のリーダーである橋本巨教授を核とする「ウェブハンドリング研究会」には、多数の企業が参加している。

研究とは興味のあることにトライして楽しむこと

東海大学在学中、砂見先生はトライボロジー(摩擦学)を専門として、橋本教授の指導を受けていた。ウェブハンドリングとトライボロジーは関連が深い。ロールの巻取りから印刷、巻上げまで、すべての工程において摩擦が生じ、そのコントロールが技術革新のもととなるからだ。これまでの研究で、10マイクロメートル以下の厚さの薄膜プラスチックを搬送した場合、鋼ローラとプラスチックフィルムの間でこれまで一般的に用いられてきた摩擦法則に従わない現状が生じることを解明。薄膜プラスチックと鋼ローラ間の新たな摩擦特性を明らかにするなどの成果を収めている。さらに、プラスチックフィルムの厚みムラや熱粘弾性特性を考慮した革新的なフィルムの巻取りロールの理論解析とその実験検証にも取り組んでいる。

一見バラバラに思えるテーマも、興味を持ってつきつめたいと思うかぎり、すべてがどこかで関連してくるという。研究を進める原動力は「楽しい」「夢中になれる」こと。「解決しなければいけない課題は尽きず、うまくいかないこと、大変なことに立ち向かう毎日。でもそれは嫌なことではなく、充実であり楽しさです」

理論や実験だけではなく実現させるまでが役目

世の中に役立つ研究を続け、発信力を持った研究者になることだ。「研究のための研究ではなく、実現させることで社会の役に立つ研究。スタートは基礎的な理論の解明ですが、常に出口を意識する」。それが研究室の方針であり、研究者としての立ち位置だ。

学生たちには「がむしゃらにやってほしい」と願う。研究においても、人との関わりの中でも、自分で限界を決めつけずに、やりたいこと、興味のあるところに飛び込んでみる。そうして「これだ」と思えるものに出会ったら、それをつきつめていってほしいと。

「目の前に壁があったら、あきらめるのではなく立ち向かって乗り越えていく。すると次に同じ高さの壁があっても、それは壁ではなくなる。そしてもっと高いレベルに挑戦できます。学問というのはゴールがなく、自分がどこまでできているかが目で見えにくい。けれど、自分自身の手で達成感を積み重ねることはできます。努力は報われる。それを実感してほしいですね」

 

機械工学科:砂見雄太 講師
【Profile】
すなみ・ゆうた
1985年茨城県生まれ。東海大学大学院総合理工学研究科総合理工学専攻を修了後、2013年4月より現職。博士(工学)。専門は、トライボロジー、設計工学など。
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