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2020.04.14 【おしえてセンセイ!4】
災害に強いまちはどうつくる?

おしえてセンセイ!

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2020.04.14

【おしえてセンセイ!4】
災害に強いまちはどうつくる?

A.住民一人ひとりが参加することが何よりも大切です。

工学部土木工学科 梶田佳孝先生

 

明治時代以来、日本のまちづくりは、道路や建物、宅地造成といったハードウェアの整備が重視されてきました。防災もそうで、より強固な橋梁や堤防をつくり、建物の耐震化、河川改修、地盤強化などを組み合わせて「災害を防ぐまちづくり」(防災)が重視されてきました。ところが2011年の東日本大震災などの大規模災害により、その発想は大きく変わりつつあります。各地域の地盤の特性や被災しやすい災害の種類、土地の利用のされ方、住民の特徴などに応じて、できる限り被害を減らす「減災」が重視されるようになっているのです。

東日本大震災もそうでしたが、日本では「数百年に一度」といわれるような豪雨災害が各地で起きるようになっています。そうした激甚災害は、いつ、どこで起きるか予測しにくいですし、すべてを予想して災害を防ぐ対策を取ろうとすると莫大な費用がかかり、全地域を網羅することは難しいのが現実です。だからこそ、被害を最小限に抑える「減災」が重要になっているのです。

「減災」の方針を作るために最も重要なのは、住民が自らの町について知り、「もしも」の時に助けあえる協力関係を日頃から作っておくことです。東日本大震災や豪雨災害の時に、一部の地域で人命にかかわる被害がなかったというニュースを聞いたことがあると思います。そうした地域では、住民同士が日頃から助け合い、自主的に避難できる「共助」の体制ができ上っていたケースが多い傾向があります。私の研究室では、湘南校舎近隣の住民や学生と一緒に地域を回り、災害時に危険となりそうな場所を探したり、より安全安心な避難経路を考えたりするワークショップを各地で行っていますが、そうした日々の取り組みが「減災力」の向上につながるのです。

こうした住民参加型の活動は、暮らしやすいまちづくりの面でも重視されるようになっています。かつては行政や企業が中心となって行う大規模開発や交通網の整備が重視されてきましたが、それだけでは人々の生活が豊かな社会をつくることには不十分で、地域の少子高齢化や産業の空洞化に対応ができなくなっています。その解決策として、住民がアイデアを出し合い、暮らしやすく、活気ある環境を自らがつくる活動が注目されています。その一方で、世代が違う多くの人が集う環境をどうすればできるのかという点も大きな課題です。土木工学というと、橋や道路をつくる面が注目されがちですが、そうした技術を生かしたまちづくりにも広がっているのです。読者の皆さんも一緒に研究し、より多くの人が参画できる次世代型まちづくりの方法を提案しませんか。


かじた・よしたか 九州大学工学部土木工学科卒業、同大学大学院工学研究科土木工学専攻修士課程修了。博士(工学)取得。 1996年より九州大学工学部助手、2012年東海大学工学部土木工学科准教授を経て、2016年より教授。専門は防災、都市計画、交通計画。主な著書に『まちおこし・ひとづくり・地域づくり』(共著)、『道路の計画とデザイン』(共著)、『都市の交通計画』(共著)など。

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