〉〉東海大学オフィシャルサイト
東海大学 工学部 School of Engineering Tokai University MENU
TOP > おしえてセンセイ! > 

2019.08.30 【おしえてセンセイ1】
マイクロプラスチックは何が問題なの?

おしえてセンセイ!

CLOSE

2019.08.30

【おしえてセンセイ1】
マイクロプラスチックは何が問題なの?

分解したり、食べたりできる生き物がいないために、海も川も山も埋め尽くしてしまうから。

          応用化学科・秋山泰伸先生(ドクターアキヤマ)

 

プラスチックは、加⼯がしやすく、安価で腐ったりしないため、コンビニのレジ袋や飲料品のペットボトルをはじめ⽇常のさまざまなものに使われています。ところが今、⾃然環境を破壊する汚染物質として世界中で⼤問題となっているのです。⿂や⿃の死骸を解剖すると、胃の中がプラスチックで埋まっていたりするなど、⽣態系への影響も甚⼤で、2060年には世界の海の⿂の量をマイクロプラスチックが上回るとの試算もあります。

動物、人間もそうですがその体は炭素と水素、そして酸素からなる有機物からできています。生き物はそれらの有機物を栄養として摂りエネルギーに変え活動しています。しかし、プラスチックは、人間が⽯油から合成してつくった有機物で、⾃然界にはもともと存在しません。そのため、プラスチックを栄養分として、利⽤できる⽣物が地球上にはいないのです。だから、腐らないわけなんですけどね。

プラスチック⾃体は、太陽の光を浴びたり、潮にさらされたりすると徐々に粉々になり、「マイクロプラスチック」になっていきます。でも、プラスチックは粉々になってもプラスチックなんです。目に見えないぐらい細かくなっても決してなくなってはいません。100円均⼀ショップなどで安価に売っているバケツを数か⽉間日なたに放置してみてください。どんどんもろくなってボロボロになります。今世界中で注目されているマイクロプラスチック問題は、それと同じようなものが、世界中に散らばり、増え続けていることです。地球の表面の70%を占める海にも大量に漂っているのです。WWF(世界⾃然保護基⾦)の推計によると海に漂っているその量は現段階で約1億5000万トン。そこに毎年800万トンが流れこんでいるともいわれています。生き物が栄養にできないし、分解もしないということは、減らないということですから、どんどん蓄積していくことになります。

もちろん、人間も手をこまねいているばかりでなく、⽣物が分解できる植物由来のプラスチックの研究開発も進められています。でも、コストが⾼かったり、使い勝⼿が悪かったりして、既存のものの代替になる製品は開発されていないのが現実です。使い勝⼿がいいからこそ世界中で使われ、私たちの⽣活に⽋かせない材料になっているプラスチック。爆発的に普及しているからこそ、環境に与える影響も⼤きくなっているのです。


あきやま・やすのぶ 1966年福岡県生まれ。九州大学大学院理学研究科博士前期課程修了。博士(工学)。九州大学助手を経て、現在は東海大学工学部応用化学科学科長。計算機マニアとして知られているほか、神奈川県内を中心に、主に小中高生向けの化学実験教室やサイエンスショーを催している。

トップへもどる