「私たちの未来のための提言コンテスト」で最優秀賞大学院工学研究科応用理化学専攻1年・地井桐理子さん
大学院工学研究科応用理化学専攻1年の地井桐理子さんがこのほど、原子力発電環境整備機構(NUMO)が主催する「第5回私たちの未来のための提言コンテスト」で最優秀賞を受賞。3月2日に東京都・日本科学未来館で表彰式が開かれ、地井さんと指導教員の若杉圭一郎教授(工学部応用化学科)が出席しました。日本では「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」によって廃棄物は地層処分すると決められていますが、制定から20年以上が経過した現在でも処分地は決定していません。コンテストは、地層処分を進めるにあたり将来的に世論形成の中核となる次世代層に関心を持ってもらうことなどを目的に開かれています。世代別の2部門に計198編の応募があり、地井さんは「地層処分が抱えるコミュニケーション的課題と、当事者意識を生むためのきっかけづくりの提案」のテーマで「高専4年生以上・大学生・大学院生」部門の最優秀賞に輝きました。
地井さんは提言の中で、「廃棄物がどのようなもので、なぜ地層処分が必要なのかを考えるプロセスを経ず、最初から地層処分ありきで話が進められてしまっている」と指摘。当事者意識を持つきっかけづくりの必要性を訴えるとともに、1分以内の動画投稿サイト「YouTubeショート」の活用を提案しました。出身である工学部原子力工学科のマスコットキャラクター「Texくん」が原子力エネルギーのメリット・デメリット、高レベル放射線廃棄物などを解説する4本の動画を制作し、地層処分についてほとんど知識のない学生や社会人に視聴してもらい、アンケートも実施。「自分事として考えるきっかけにつながると期待できる」とまとめ、「問題提起だけでなく、若者が多く利用するツールを活用して効果を確認している点がよかった」など高い評価を得ました。
地井さんは、「学部生時代に若杉先生の授業で地層処分について詳しく教わり、私が生まれたころに安全技術は確立されているのにいまだに実施には至っておらず、いつしか“自分にできることをやらないと”と考えるようになりました。地層処分について議論する前に、国民全体に自分事として考えてもらう必要があるのではと思い、今回の提言をまとめました。長年にわたって研究してきた成果が認められてうれしい」と語りました。若杉教授は、「地井さんは実験やシミュレーションを通して解析を進める一般的な工学の研究とは異なり、文系と理系の間のような難しい研究テーマに取り組み、苦労もたくさんあったと思います。しかし、先日は原子力学会関東・甲越支部の学生研究発表会でも奨励賞を受賞するなど、成果がだんだんと日の目を見るようになっており、とても頼もしく感じています」と今後に期待を寄せていました。