〉〉東海大学オフィシャルサイト
東海大学 工学部 School of Engineering Tokai University MENU
TOP > 研究紹介 > 

2019.01.31 乗り心地を追求した『人を感じ取るクルマ』を研究する
動力機械工学科 加藤英晃講師

研究紹介

CLOSE

2019.01.31

乗り心地を追求した『人を感じ取るクルマ』を研究する
動力機械工学科 加藤英晃講師

高齢化の進行や観光地でのカーシェアリング普及などで、超小型車の需要が急増している。しかし、小型軽量になるほど、路面からの振動や車外からの騒音の影響を受けやすく、乗り心地が悪くなる傾向にある。今後普及していくといわれる電気自動車も小型・軽量なクルマだ。そうした課題を解決すべく機械や電気、磁気、音響、制御技術を組み合わせて「人と環境にやさしい乗り物」を研究している、動力機械工学科の加藤英晃講師の研究室を訪ねた。

生体計測による個々人の100点を目指した乗り心地

乗り心地と一口に言っても、主観的なもののため個人差が大きい。これまでの研究では、主観を数値化して基準を作るやり方が一般的に行われてきたが、加藤講師は全く違うアプローチをとっている。

「一般的な手法は、例えるなら個人の100点を目指すのではなく、平均60点を目指す考え方に基づいています。そこで考えを変えて主観は主観のまま制御する。クルマをカスタマイズし、乗る人一人ひとりに合わせた乗り心地を提供できれば、それぞれの100点を目指せると考えています」

そのために活用しているのが、乗る人の生体データだ。性格・性質をインプットし、その時々での状態を解析できれば個人に合わせたカスタマイズが可能となる。具体的な方法としては、脳波や心電図といった生体情報をクルマにインプットし、走行中も常に計測。その情報をもとに分析した体の状態に合わせて車内の環境を制御する。

現在は、さまざまな人に乗ってもらい、多種多様な状況での生体情報を計測するほか、アンケートを繰り返して、データを蓄積している状況。例えば運転手の場合、道路の混み具合による心理的な負担もあれば、長時間運転などによる肉体的な負担もあり、それにあわせて生体情報の状態も変わる。また目の動きを調べ、景色の見え方を判断することもできる。それらの情報は、乗り心地だけでなく事故への防止のためにも重要だ。

シートに細工をして個々人に合わせた揺れの提供を

研究室では現在、振動と操作性能、音に着目して乗り心地の研究を進めている。特に振動は、シートの下にばねを設置し、揺れ具合を制御することで乗り心地を高めようとしている。

「乗り心地と聞くと、揺れの少ないイメージを持つ人が多いかもしれませんが、揺れることで“運転している感覚”を味わいたいという人もいます。なかには同乗者でも、揺れたほうが心地よいと感じる人もいます。赤ん坊が乗っている場合、ぐずってしまった時に揺らし方を調整してあやすように揺らすなど、臨機応変に対応することも考えられます。シートを制御して揺れ具合を変えることで、その人にあった人の乗り心地を提供できるようにしたい」

実現化していく『人を感じ取るクルマ』

現段階でも、心電図の計測データを使って一定の乗り心地を制御することに成功しており、「実用化しようと思えばできるレベルにはなっている」と加藤講師はいう。「だが、まだ個々人の100点には至らないため、研究を続けていく」と語る。

また、最近ではマスキング(嫌なものによいものを被せる)の技術を応用し、音や音楽を流すことで雑音が気にならないようにする技術も実現できるようになっている。

現在は実験室のレベルのため、さまざまな計測機器を活用できるが、実際に町に出て走るという時に、使える機器は簡単に計れるものに限られてくる。そこは今後の課題だという。実験室には簡易的なシミュレーターもあり、学内でクルマを走らせるだけでなく、VR(ヴァーチャル・リアリティ)技術も使っているとのこと。取り入れられそうなものは取り入れ、幅広く自由に研究している。「乗り心地を追求するためには、何よりも自由さが大切」とのことだ。

それは学生にもいえることで、加藤講師は自身の研究を手伝わせるのではなく、学生の考えや発想を大切にしながら一緒になってやるスタイルをとっている。「学生たちは、『未来の乗り心地を実現するためのクルマ』をベースに自らテーマをデザインし、研究しています。僕自身も教えられることが多いし、だからこそ面白い」と語る。

「東海大学は自然に囲まれ、さまざまな考え方を持つ学生がいるため、日々面白い思いつきが生まれるフィールドがあります。動力機械工学科に興味があれば、ぜひオープンキャンパスなどに足を運んでください。これからも多くの人と出会えることを楽しみにしています」

動力機械工学科: 加藤 英晃 講師
【Profile】
かとう・ひであき

1986年東京都出身。東海大学大学院総合理工学研究科修了。博士(工学)。2014年より現職。専門は生体計測工学、心理工学、メカトロニクスなど。

トップへもどる