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2017.09.12 シミュレーション技術で原子炉の安全な運転を支える

研究紹介

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2017.09.12

シミュレーション技術で原子炉の安全な運転を支える

工学部原子力工学科 亀山高範教授

 

日本の発電用原子炉は、「炉心溶融を起こさない」の前提で開発・改善が進められてきた。しかし、2011年3月11日に福島第一原子力発電所で炉心溶融・格納容器破損に至る過酷事故が発生した。国内では実際に炉心溶融を起こす実験などできない。そこで事故や対策についての研究はもちろん、原子炉自体の研究や開発・設計においても不可欠なのが、シミュレータの存在だ。福島第一原子力発電所の事故以降、シミュレータの重要性は、ますます増している。その特徴や原子力工学の未来について、原子炉物理学と核燃料工学を専門とする亀山高範教授に聞いた。

原子力工学科の原子炉シミュレータ

東海大学は1995年、国内の大学で初めて研究用原子炉シミュレータTURS(Tokai University Reactor Simulator)を、2015年には発電用原子炉シミュレータSARS(Severe Accident Reactor Simulator)をそれぞれ設置し、現在も性能向上や新機能追加を続けている。両タイプのシミュレータをもつ大学は、国内では本学のみである。

TURSは原子炉の専門知識や技術を学ぶ設備で、日本原子力研究開発機構液体減速臨界炉(茨城県)と京都大学の固体減速臨界炉(大阪府)の2種類を模擬している。一方のSARSは、過酷な事故が起きた時に発生するプラント内の挙動や炉心損傷の進展過程を明らかにする研究用設備で、国内にある加圧水型発電炉と沸騰水型発電炉を模擬できる。物理現象を精細に計算するプログラムに、入力と出力のデータをグラフィック化する機能を組み込んだ。その性能は学術界で高く評価されている。

原子力発電所が存在するかぎり、新たな知見や経験は、日々積み重ね続けられている。亀山教授の研究室では、原子力発電に関わるさまざまな物理現象をプログラムで表現できるよう、最新データを集め、検証し、シミュレータに組み込む作業を続けている。それらのデータが、実際にシミュレーションする際の核となる。

データの共有や連携、各分野のつながりの中に最先端がある

国内には、学生が利用・実習できる原子炉や施設は大幅に減少している。だからこそ、正しい運用方法を身につけるためにも、原子炉内の現象を研究するためにもシミュレータが欠かせない。SARSでは、対象となる事象を決めてシミュレータに入力し、通常の状態、過渡的な現象、想定した事故、過酷な事故などを模擬し、それぞれの状態での原子炉のふるまいを解析して、対処方法などを導き出していく。事故が起きた場合「この時間内にこの対策を打てば燃料が溶けない」、「原子炉にダメージを与えずにすむ」、そういったことを分析する。

「ただし、シミュレーションはあくまで模擬。結果をそのまま“こうなりました”と発表しても説得力はありません。重要なのは結果の検証です。たとえば他機関(電力会社・メーカー・大学・研究所)が行った、同様な実験・解析と比べて『妥当な結果が出ているか?』や実際に起きた現象であれば、『模擬の結果がその通りになっているか?』といったことの検証を重ねることも重要です」

原子炉のメーカーや電力会社は、いずれも自社にシミュレータをもち、一部の研究機関では実験用原子炉を運用して訓練や研究に活用している。そうした企業や機関とも連携し、データや知見を共有、経験を積み重ねて、最新の研究に役立てている。

「原子力はさまざまな分野の総合的な学問です。学際的なところ、分野を横断したつながりの中に最先端があります。燃料について極めたい場合も、安全性を追求したい場合も、それぞれの分野を中心に、つながりのなかで研究しなければ意味がありません。広い視野をもち、総合的に考えることで自分の研究分野を深めていきます」

原子炉のあるべき未来を模索

亀山教授にはシミュレータを活用して原子炉の安全対策、事故対策に関する研究を重ね、原子炉の未来に関わっていきたいという想いもある。現在、国内の原子炉は寿命を迎えつつある。このままでは廃炉のみが増える状況だが「それは建設的とはいえない」と亀山教授は言う。「古い原子炉をリプレイスして、より安全で効率のよい最新の炉に取り替える、それが健全な方向性だと思います。若者はその研究開発に携わってほしい」

現在の日本は石油や天然ガスを大量に輸入することで、国外に資産を放出している。さらに、国際的に見た原子力技術の分野でも、これまで培ってきた日本の地力を発揮できにくい状態にある。

「大学には先端的な研究と同時に、学生を育て社会に送り出す役目があります。東海大には原子炉について基礎から応用的なことまでを幅広く学べる環境があり、原子炉シミュレータの成果を発電炉に活かす研究もできる。それらを活用し、技術基盤や人材基盤が厳しくなっている現状を打破し、世界で活躍する人材を育てたいです。」

亀山高範教授
原子力工学科:亀山高範 教授
【Profile】
かめやま・たかのり
1962年岡山県生まれ。東京大学工学部卒業後、東京大学大学院工学系研究科修了。東京大学より博士(工学)取得。電力中央研究所を経て、2012年に東海大学に着任。専門は原子炉物理学と核燃料工学。
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