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2020.11.17 【おしえてセンセイ6】
長く使うと包丁が切れなくなるのはなぜ?

おしえてセンセイ!

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2020.11.17

【おしえてセンセイ6】
長く使うと包丁が切れなくなるのはなぜ?

A.野菜や肉を切るうちに刃先が削れて丸くなってしまうためです

工学部精密工学科・千葉雅史先生

料理をする人も、しない人でも、おそらく一家に一本は包丁があると思います。最近は、ステンレス製やセラミック製も多いですが、最も長く使えるのは、鉄製です。ところが鉄の包丁にも、欠点があります。長く使っていると切れ味が悪くなってしまうのです。

包丁の刃は、0.1mm程度の厚さで、刃の表面を顕微鏡などで見ると、微妙にギザギザしてしていて、完全な平らな面ではないことがわかります。いっぽう背の部分は柔らかくしなるようになっています。包丁は、硬い背をしならせながら手前に引き下ろすことで、刃先で食材の組織を切っていく仕組みになっています。刃の先端の角度が鋭ければ鋭いほど切断面の組織を傷つけないので、食材本来の味を損なわず、おいしい料理も作れます。しかし、刃は野菜や肉を切るときに少しずつ削れたり、欠けたりして丸くなり、切れ味が落ちていきます。「鉄が野菜に負けるなんて」と思うかもしれませんが、「結構繊細なやつ」なのです。

切れ味を取り戻すためには、包丁を「研ぐ」必要があります。専用の砥石やシャープナーを使って刃を磨き、鋭く尖らせて切れ味をよみがえらせます。もし家に切れない鉄の包丁があれば、一度研ぎに出しみてください。驚くほど切れ味がよみがえり、いつもの料理が格段においしくなると思います。自分で研ぐこともできますが、まずはプロの研ぎ師にお願いすることをお勧めします。包丁を長持ちさせることにもなりますのでぜひ試してみてください。

研ぐときに気をつけたいのはそのタイミングです。料理をする前や料理中に研ぐのはやめましょう。研いだばかりの包丁は鉄のにおいが強く、食材にうつると風味を損ねます。一番いいのは夜寝る前、夕食の片づけが終わって寝るときにやるのが一番いいと思います。

どの家庭にでもある身近な包丁ですが、そこにも極めて複雑で高度な技術が詰まっています。日本古来の包丁は、「刃物鍛冶」といわれる人々によって作られているのですが、職人たちは包丁の背から刃先にかけて鉄の構造や不純物の量を微妙に変化させます。つまり、熱の加え方を変えたり、さまざまな加工技術を駆使して、鋭い切れ味を生み出しています。私の研究室では、鍛冶師と協力しながら、刀や包丁の組成と構造について科学的に解析をしています。目標は、最高の日本刀といわれる鎌倉時代の作品を再現することです。先人にはまだまだ及びませんが、大きな夢に向かってこれからも研究を続けます。

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