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2020.03.10 世界最高峰の舞台で活躍するレーサーを目指す
レーシング・ドライバー
山下健太さん(2018年度・動力機械工学科卒)

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2020.03.10

世界最高峰の舞台で活躍するレーサーを目指す
レーシング・ドライバー
山下健太さん(2018年度・動力機械工学科卒)

2019年度国内最高峰のカーレース『SUPER GT』のGT500クラスで、総合チャンピオンに輝いた山下健太さん。子どもの頃からカートレースで活躍し、東海大学付属浦安高校を卒業したあと、「レースドライバーになるなら、マシンの構造にも精通したい」と東海大学工学部動力機械工学科に進学した。在学中は学校とレースとの両立の難しさに苦悩したという山下さんは、卒業から約1年半で栄冠を勝ち取るまでに至った。昨秋からは、世界最高峰の耐久レース『ル・マンシリーズ』にも参戦。日本人の若手の中でも、『速くて手堅い』とトップクラスの実力評価を受けるドライバーとなった山下さんは、「大学時代があったからこそ今がある」と語る。日本から世界へ。突き進むことに余念のないその覚悟や自信はどこから来るのか。山下さんにインタビューした。

 

世界を見て、国内を見据える

国内最高峰のカーレース『SUPER GT』のGT500クラス総合チャンピオンの栄冠を20代で勝ち取った山下さん。国内で優勝できたのなら、次は世界へ進出してもおかしくないはず。しかし、「F1ドライバーの多くは10代。自分がチャンピオンになったのは22歳が最初で、世界的に見ると若くない。だから、世界はすぐ取れないかなと思った。まずは国内で頑張ろうと決めた」と語る山下さんは、そうして総合チャンピオンに登りつめた。

 

「自分でもびっくりするくらい結果もよく、いろいろ動いたなという年」と、2019年を振り返る。「苦労する時も多かった1年だったけど、GTでは安定して上位だった。でも、フォーミュラは好不調の波もあった。ただ、1年が終わると、全体的に悪くなかったと思う」と振り返る。

「これまで、GTやスーパーフォーミュラでチャンピオンを目指していた中で、今年秋からル・マンシリーズに挑戦させてもらえることになった。ずっと積み重ねてきたことが結果につながり、視界が開けた」という。国内レースで結果を出してきた山下さんに、世界から招待状が届いた形だ。だがここで終わりではなく、次の目標も考えているという。

「世界に出る夢は達成したけど、それで終わりではなくて、ル・マンに限らず、世界で活躍できるドライバーになりたい。耐久戦しつつ、フォーミュラもやりつつ、全部いいところに行けるようになりたいし、今出ているカテゴリーの中では、全部一番を取れるように頑張りたい」

ドライバーとしてのステップアップ

山下選手が駆ったチーム「WAKO’S」のマシン。大嶋和也選手とのタッグで戦った

「一年間を通して、いい結果を出し続けることは難しい」と語る山下さん。若手の中でも有力視され、『速くて手堅い』と評価されているが、レースは一筋縄ではいかないらしい。

「どんなときも冷静さが大事。あまり怒らない性格なのでその点には自信がある」と語る山下さん。その一方で、「マシンセットアップを正確に作り上げていく力がまだ足りない」と課題を明かした。

「レース前の練習走行は限られていて、日曜にレースがあるなら、金曜に一時間ぐらいだけ。その一時間の中で、マシンはいろんな場所をいじれるけど、気候やトラックコンディションに合わせていじらないと、人間だけ速く走れても車がいまいち決まってない状態になる。強い選手は一年間通して速い車を作れるので、そこがまだ足りない」と、人車一体の大切さを示した。

「基本的にはエンジニアとコミュニケーションを取りながらセッティングを進めていく。それには、自分が運転して感じたことを正確に伝える能力が必要になる。エンジニアはドライバーのコメントと車両データからセッティングを修正するので、コメントが変だと車が速くならない。いかに的確に伝えるかが課題ですね」

冷静に状況を判断し、チームのメンバーと的確にコミュニケーションできる力は企業などで働くときにも必要なスキル。それは、レースの世界では、一層重要になるそうだ。

育成選手としての学生時代と、プロとしての今

学生時代から一人暮らしをしていた山下さんは、大学の勉強にレース、加えて家事もこなす毎日を送っていた。「育成選手からプロになれるか瀬戸際の難しい時期で、授業も休むことは何回もあった。テストもダメな時が何回もあって、このままじゃまずいと思った時もあるけど、諦めずに色々やったら、先生とかにもよくしてもらったし、すべて自分でしたことで、成長できた4年間だった。乗り切れた結果が、今のベースの自信に繋がっている」と山下さんは語る。

「大学の勉強もそのまま役に立つことがないものは多いけど、車の構造とか学んだことは、今ドライバーとして大事になってるし、車もどういう風に動いて走るのか知っておかないと上手く走らせられないので、知っていて、勉強していてよかったと思うことしかない。回り道をした印象はあるけど、ただの回り道ではなかった」

学生時代に積み重ねてきたものに無意味なものはないと、山下さんは教えてくれた。

動力機械工学科で培った基礎

現代のレーシングカーは、エンジンや空力だけでなく、コンピューターも搭載したあらゆる技術の融合だ。だからこそ、「車のメカニズムとか、構造、データの読み方などさまざまなことを知っておかなくちゃいけない時代。動力機械工学科では、その基礎を学んだ」と話してくれた。

「普段の授業の中では車の構造が学べるし、プログラミングもした。モータースポーツ専門の方の授業もあった。それらは全部、ドライバーとしての下地になってる。知っているのと知らないのでは違う。学べる機会は得られるだけ得た方がいい」

手にした成功が奇跡でも偶然でなく、努力の結果であることを山下さんは伝えてくれた。

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