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2019.03.22 究極の『3D』表示技術の実現に迫る 
工学部 光・画像工学科  面谷 信 教授

研究紹介

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2019.03.22

究極の『3D』表示技術の実現に迫る 
工学部 光・画像工学科  面谷 信 教授

昨今、3Dと聞くと平面スクリーンから映像が飛び出して見える3D映画を思い浮かべるだろう。実はこれは像の側面や裏面など立体像の全貌を見られるわけではないので、真の立体表示とは言えない。真の3D表示は、像の周囲のあらゆる角度から見た立体像を見せるものである。そのような究極の3D表示装置が実現できれば、例えば患部臓器の表示に応用し手術計画やリハーサルに活用することで、手術の成功確率を向上させる効果も期待できる。こうした究極の立体像表示はSF映画でも見られる。スターウォーズで、レイア姫が空間に立体的に投射されるシーンを覚えている人も多いだろう。

面谷信教授が現在研究中の『体積型立体表示』はまさにそのSF映画で見た未来の実現に近づきつつある。その研究状況について面谷信教授に伺った。

プロジェクターから照射した光は内部のミラーと放物面鏡に反射されて、上部空間に立体像を浮上形成する。エンターテインメントだけでなく、医療用途として手術対象の臓器表示などにも応用が期待できる

 

『体積型立体表示』方式で真の立体像を映し出す


面谷教授が考えた『体積型立体表示』は、人間の目の残像特性を利用して立体像を見せる技術だ。

研究は当初、高速回転する8段の階段状スクリーンにプロジェクターから画像を照射することから始まった。階段状スクリーンは一回転ごとに8枚の円型スクリーンを空間に階層状に形成する。プロジェクターから各階層に対応する断面画像を照射することで、8枚の断面から成る立体像を映し出すのだ。
階段状スクリーンの回転数は、毎分2000回転。この回転数だと残像効果で8枚の断面像が常に重畳して見え、360度から観察可能な立体像を空間に形成可能だという。
「でも8段程度の階段状スクリーンだと、画像が荒くなってしまう。そこで、もう一つ進んだのがこちらのスクリーンです」と続いて面谷教授が説明してくれたのは“螺旋滑り台型スクリーン”である。螺旋滑り台型スクリーンは公園で子供がくるくる回りながら滑り降りる遊具を想像させる形だ。これにより、断面像の枚数を原理的に無限大に増やせるので、滑らかな画像の表示が可能になった。

螺旋滑り台と放物面鏡の組み合わせで空間に立体像を浮上させる

とはいえ、この状態では画像に触れることはできない。触れれば、回転する螺旋滑り台で怪我をしかねない。その課題解決策として新たに考案されたのは、放物面鏡との組み合わせだ。2枚の放物面鏡を上下に向かい合わせた空間の底部で螺旋滑り台を回転させて立体像を形成すると、上側の放物面鏡中央の開口部から立体像が空間に浮かびあがって見える仕掛けである。

「観察できる視野角はやや狭くなるのですが、何もない空間に立体像が浮上する図式は、いよいよスターウオーズのレイア姫のシーンを実現できるものです」

当初の構成では、プロジェクターと反射鏡からなる像照射系が、観察者の視野内で目障りなのが欠点だった。今では放物面鏡の側面に設けた穴からプロジェクター光を照射し、放物面鏡で囲まれた空間の中央に鏡を置いて螺旋滑り台に光を当てる構成により、プロジェクターと鏡を視野外に隠蔽できる表示装置実現への改良が進んでいる。

アミューズメントパークのアトラクションに活用が有望

「エンターテインメントの分野でも、アミューズメントパークのアトラクションとして、来場者を驚かせる使い方も有望。映画などの飛び出し感のみの3Dとは違う次元の真の3D技術として、いよいよレイア姫の空間表示がそろそろできそうです」と面谷教授は語る。

これからは、いよいよ協力企業を探して実用的な映像サイズの実現へと進む計画だ。また、スクリーンの透過率や表面性の最適化等、もっと綺麗に見せるための工夫に研究室の学生たちが精力的に取り組んでいる。

「現代の私たちの生活は、ディスプレイなしには成り立ちません。映像表示は重要だからこそ、光や画像、映像に関連する企業も多く、今後さらに発展することが期待できる分野だと思います。学生・高校生には、ぜひ3Dをはじめ映像/画像技術に興味を持って進路を考えてほしい」と面谷教授は最後に語った。

光・画像工学科:面谷 信 教授
【Profile】

おもだに・まこと 1955年鳥取県境港市出身。東北大学大学院機械工学第二専攻修士課程修了後、日本電信電話公社(現・NTT)横須賀電気通信研究所に勤務。1997年より東海大学工学部光学工学科勤務。2002年より現職。工学博士。専門は、3D表示技術、電子ペーパー、視覚認識など

 

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