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2022.03.09 デトネーションで世界を変える⁉︎ 衝撃波現象の解明と利用を追求
工学部航空宇宙学科 水書稔治先生

研究紹介

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2022.03.09

デトネーションで世界を変える⁉︎ 衝撃波現象の解明と利用を追求
工学部航空宇宙学科 水書稔治先生

飛行機やロケットを飛ばすために欠かせないジェットエンジンとロケットエンジン。いまや私たちの生活に欠かせないものとして進歩し続けている分野ですが、現状のものをよりよくするだけでなく、まったく新しい発想からのエンジン研究が注目を集めています。デトネーション(音のスピードを超える超高速で火炎が伝わる現象、爆轟とも呼ばれる)を利用したデトネーションエンジンがそれです。そこに関わる研究を中心に手掛けている航空宇宙学科・水書稔治先生にお話をうかがいました。

現在のジェットエンジンをはるかに上回る推進力にもかかわらず、燃費のよいエンジンができたら。あるいは火星など、酸素のない環境でも大きな推進力が出せるジェットエンジンがあったら、火星でも飛行機が飛ばせます。水書先生の研究は、世界が注目するそんな技術革新に関わるものです。

そのため、JAXAや防衛省をはじめ、宇宙開発や航空分野における最先端の研究機関や企業と協力をしながら、大規模な実験やさまざまな活動に取り組んでいます。特に、デトネーションエンジンの内部で起きる、極限現象の研究で多くの成果をおさめています。

「私の専門は衝撃波の研究です。衝撃波は目に見えないため、言葉を聞いただけではどんなものかイメージしにくいかもしれません。映画、アニメーション、あるいはリアルなゲームで、戦闘機や弾丸が飛んでくる様子や爆発が起きたりしたとき、まわりにその影響が広がる様子が特殊効果で表現される場合があります。あれが、衝撃波です。」

衝撃波を伴った燃焼波(火炎)をデトネーション(爆轟)と呼び、極めて高い圧力と温度を発生させることができます。このデトネーションを活用したエンジン(デトネーションエンジン)が実現できれば、現在のエンジンよりも高出力で燃費のよいものになるため、世界各国で競って研究開発が進められています。

「デトネーションエンジンをどの国が最初に実用化するかで、航空機エンジン業界の勢力図が一変する可能性があります。また、火星などの二酸化炭素が大気の主成分で、地球で使うジェットエンジンが使えない惑星でも、飛行機エンジンとして使える可能性を持っています。」

実験方法を編み出すやりがい 現象を見える化する面白さ

とはいえ、デトネーション・エンジンの実用化に向けてはまだまだ課題が多いのが現実です。水書先生の研究室では、日々、その課題の解決に向けた研究に取り組んでいます。必要な実験をしてデータを取る。極限現象を扱うので簡単なことではありません。

「衝撃波と燃焼波が同時に発生するのがデトネーション現象。そこには非常に大きな熱と圧力が発生します。そのため、実験装置がその熱で溶けないように、実験は1秒程度で終了する必要があります。そのわずかな時間で起きる現象を、様々なセンサーを使って記録し、マイクロ秒(100万分の1秒)の単位で膨大なデータを収集していきます。」

デトネーションのような極限現象を研究するには、一般的な実験方法では十分ではなく、新しいセンサーの開発や、目に見えない現象を画像として記録し、起きた現象をよりよく理解できるようにする可視化研究からはじめることも多いそうです。「これまでにないオリジナルなセンサーや実験方法を考案し、実現させる。全く新しいものをゼロから作り上げることも面白さであり、研究者としてのやりがいのひとつですね。」

水書研究室が考案した実験方法や可視化のスキルを求める研究協力要請も後を絶ちません。工場での爆発事故や火薬が爆発した際には周囲に衝撃波が広がり、それによって人や建物が損害を受けます。この衝撃波も超音速機や打ち上げロケットが飛ぶ際に周囲に発生する衝撃波と同じ性質です。事故が起きた際の被害を少なくするための研究をはじめ、大型航空機が飛行する際の乱気流の解明、宇宙ベンチャー企業との宇宙旅行実現のためのデトネーションエンジンの研究、などのプロジェクトにも取り組んでいます。

「ロケットや飛行機を効率よく安全に飛ばすための研究から、爆発の際の危機管理まで、基礎から応用まで、研究・開発・実用化をめざしていける分野です」

【Profile】航空宇宙学科航空宇宙学専攻・水書稔治 教授
みずかき・としはる 1966年、東京都生まれ。東京理科大学理工学部物理学科卒業後、動力炉・核燃料開発事業団(現・日本原子力研究開発機構)勤務。東北大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻博士課程修了。アメリカ航空宇宙局 Langley Research Center研究員、防衛庁技術研究本部(現・防衛省防衛装備庁)研究職技官、インド科学大学研究員を経て、2006年から現職。専門は空力推進、衝撃波医工学、レーザー応用計測など
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