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2022.02.25 ノーベル賞級の実験装置や、世界最大のマグネットづくりを目指す
工学部材料科学科 小黒英俊先生

研究紹介

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2022.02.25

ノーベル賞級の実験装置や、世界最大のマグネットづくりを目指す
工学部材料科学科 小黒英俊先生

リニアモーターカーやMRIに応用される磁力や超伝導の技術。超強力な磁力を出すマグネットで磁場を発生させることで、普通の状態では起こらない、さまざまな現象を発生させます。絶対零度に近い低温の環境で、超伝導体により強力な磁場を発生させ「何ができるか」「何が起きるか」を探る。可能性から模索する研究の世界が広がる材料科学科(4月から電気電子工学科)・小黒英俊先生の研究室でお話をうかがいました。

 

2017年、超伝導研究の分野で世界的にインパクトを与えた研究者や、高度な技術進展に貢献した研究者に与えられる超伝導科学技術賞を受賞した小黒先生。

「超伝導は、活用の仕方そのものが研究課題になり得る、無限の可能性が広がる研究分野です」と語ります。

なぜ活用方法自体が研究課題になるのでしょう? その理由は、超伝導体を使うと磁場をコントロールできることにあります。私たちは地球という磁石が生み出す磁場の中で生きています。超伝導体を使ってその磁場を操作することで新しい技術を生み出せるのです。

すでにビジネスとして成り立っているのは、病院で検査に使われるMRI。さらにリニアモーターカーの実用化も進められています。また、超伝導体によって発生した強力な磁場の中でははじめて観察できる物質の特性や科学現象があることもわかっています。

「自分の研究が新たな実験装置の開発につながり、そこからこれまでにないもの、ずっと解明したかったことのヒントが見つかるかもしれない。研究の第一歩を踏み出すことに貢献できる、分野のボーダーを越えて、興味のままにどこにでも踏み込んでいけるのが魅力」と小黒先生は話します。

特殊な磁場を発生させるためには、マイナス269℃程度の低温が必要です。あらゆる物質が止まる絶対零度がマイナス273℃。それより4℃高いだけの超低温というのは、そこに到達するだけでも難しいといいます。小黒先生はその環境で超伝導体が引き起こすさまざまな現象に関する研究成果を出し続けています。

「学生たちには、うちの研究室は極低温の制御が日本一うまいんだよ、と伝えています」と笑顔で話します。

電気を最大限に有効活用する 世界最大のマグネットも夢じゃない!

超伝導の活用法として、国が研究を推進しているのが電力ケーブルです。現在使われている銅製の電線では、送電の際の抵抗で電力が失われてしまい、長距離になるほど使える電力はどんどん少なくなっていきます。

一方で超伝導体の電力抵抗はゼロ。つまり、超伝導体の電線なら電力のロスがなく、作った分の電力を丸ごと使えることになり、エコロジーの視点から、とても有益なことになります。超伝導体の電線でループを作ったら、いつまでも電気が流れ続ける。つまり、電気を電気のまま蓄えておくこともできるといわれています。

実際は低温の環境を生み出すために電力を使用するので、家庭用の電源などへの活用は現実的ではありません。けれど、電車などの大きな電力を消費するものなら、電気抵抗によるロスがなくなることで十分プラスになる計算です。

どんな新しいことが飛び出すかわからない超伝導と磁場の研究。小黒先生はかつて、超伝導だけで電磁石を作り、世界最大のマグネットを作り出しました。さらに、超伝導と特殊な電磁石を合わせて、これまでにないレベルの磁場を生めるマグネットで世界一を狙っています。

30年ほど前に日本が世界一になり、その後、アメリカがより強力な磁場で世界一になって20年。「日本には、それを更新する技術がすでにあるはず。夢の話ではなく、どう実現させるかの段階。これをなんとか実現させたいと思っています」。

【Profile】材料科学科・小黒英俊 先生
おぐろ・ひでとし 1979年新潟県生まれ。東北大学工学部応用物理学科卒業後、東北大学大学院工学研究科博士後期課程修了。茨城大学フロンティア応用原子科学研究センター、東北大学金属材料研究所を経て、2016年より現職。専門は超伝導材料、超伝導工学、低温工学。
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